しあとるだいありー

えんどゅのブログ。9/12/2015~ シアトル大学に留学中

不法入国に10回失敗したおじさんに出会った

 

メキシコ4日目の夜。

笑顔が素敵な、優しそうなおじさんと一緒にご飯を食べました。

話を聞いてみると、

彼はメキシコからアメリカへの不法入国に10回失敗して、11回目に挑もうとしているおじさんでした。

 

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アメリカとメキシコにまたがる国境。建てられた壁は、海まで続いていました

 

基本的には労働をしている私たちですが、

夕方は社会見学をしています。

その一環で昨日はCasa del Migranteという場所に行きました。

 

アメリカ大統領候補のドナルド・トランプが「メキシコとアメリカの国境に壁を作る」と主張したのは有名な話ですが、

実際にメキシコからの不法移民はアメリカで大きな問題になっています。

 

原因はメキシコとアメリカの経済格差。メキシコーアメリカの国境は、世界中を見渡しても特に大きな経済格差を抱えている国境です。

ビザを取得するのも難しく、より良い雇用や教育などを求めて多くの人がメキシコからアメリカへ不法移民として流入しているのが現状です。

もちろん違法なので、不法移民は見つかり次第強制送還されます。

 

昨日訪れたCasa del Migranteは、そんな、アメリカから強制送還された人々が集まる場所。

荷物をまとめたり、準備する時間も与えられずにメキシコに送られた人々に、

寝る場所やシャワー、ご飯を与えるシェルターです。

 

職員の方のお話を聞いた後、

実際にそこにいる人たちと、夜ご飯を一緒に食べました。

 

そこで、私の目の前に座っていたのが彼でした。

 

メキシコについてきちんと学ぶまで、不法入国者=タトゥーまみれのギャング風の人だと思ってちょっとドキドキしていた私。

タトゥーもなければギャングでもない彼は、2歳と10歳の息子を持つお父さん。

メキシコで生まれ、より良い暮らしを求めて21年前からアメリカへの入国をスタートしたそうです。

アメリカにいる間は基本的にカリフォルニアで生活し、息子たち家族はカリフォルニアにいるそう。

しかし、不法入国が発覚すること十回。その度にメキシコに強制送還され、その度にまた不法入国を試みています。

 

特に驚いたのが、彼が毎回歩いて国境を越えていること。

メキシコーアメリカ国境にまたがる砂漠を歩いて越えたそうです。

 

国境警備隊から逃れるために、砂漠を走らなきゃいけなかったことが一番辛かった。水や食料はすぐに尽きるから、それも辛い。」

 

そう語る彼は、家族のいるカリフォルニアに戻るために11回目の砂漠越えの準備をするためにシェルターにいる、とのことでした。

 

不法入国の準備している人を泊めていいのか?強制送還者の保護が目的のシェルターの主旨と反してない?と疑問も湧いたけども、

 

何が一番ショックだったって、

より良い生活を求めるために大きなリスクを冒さなければいけない人々がいるということ。

 

気候の厳しい砂漠を、しかも食料や水無して何日間も歩くなんて、命をリスクに賭けています。実際に、国境付近の砂漠では一年に何百人もの人が死んでいる

 

でもそこまでしてアメリカに渡りたい人々が何万人もいるということ、

特に彼は人生で十回もそのリスクを冒していることがすごくショックでした。

 

 雇用や教育という私が当たり前に受け取れるようなことを、命をかけないと満足に受け取れない人がいること、

知っていたけど、実際に会って会話するのは初めてで、

おじさんとの出会いは、メキシコで一番印象に残る経験になりました。

 

 

 

 

 

 

「国境を歩いて越える以外に、何をするのが好きなんですか?」って私が聞いたら、

彼は「別に趣味で越えてるわけじゃないよ」と笑いながら、

「でも、メキシコの歴史を勉強することが好きかな。僕は歴史家なんだ。」

と得意げに語ってくれたおじさん。

 

トランプが語る不法移民の姿と実際の不法移民の姿は、

随分違っているように思います。

 

壁なんて作ったらもっと現実が見えなくなるよ。

メキシコとアメリカの、

物理的な壁も、精神的な壁も、もっと低くなればいいのにと思いました。